一寸先は光なり

不動産全般・住宅ローンに不安のある方へ

親子間売買(親族間)の注意点

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親子間(親族間)売買とは

1、 愛着のあるご自宅から離れたくはない 

                  

2、 体の不自由な親が近くに住んでいる、

   介護をしている親が近くに住んでいる       

 

3、 高齢が理由により賃貸住宅を借りるのが難しい

             

4、 子供が通学している学校を変更したくはない

   

5、 店舗付住宅等で自宅でご商売をされていてお店の場所を移したくない。

様々な理由により「自宅に住み続けたい」というご希望を叶えることが可能になる手法と1つです。

一般的には「親子間」で不動産売買を行うことによって債権者である金融機関に残債務を支払い抵当権を外してもらいます。

一番のデメリットは通常の金融機関よりも貸付金利が高いことです。
一般の方が考える金融機関では融資はなかなか難しい。

しかし、最近では途中から「借り換え」を行うことによってこのデメリットも緩和されてきました。

住宅ローンの借入ができる年齢を考えた場合に、通常の「親子間売買」は「子供が親を助ける」という形が一般的です。

リースバックという言葉も知名度を増してきましたが、

現実的に実利、メリットが多いのは「親子間売買」以外にはありません。

理由は単純に親子間の場合は「利益」ではないからです。

通常、投資家や不動産業者が入る「リースバック」には

一般的には相談者の方のメリットは希薄です。

当然のことながら不動産会社や投資家は利益最優先です。

儲けるためにリースバックという形で投資を行います

しかし、「親子間」ではそういった発想がないことが誰にでも解るとは思います。

また、利益が出ても、自分の子供ですから惜しくはないでしょう。

唯一、実利のある親子間売買ですから、慎重に手続きを進めて欲しいと思います

 

親子間(親族間)売買注意点

 

近年、インターネットの普及によりご自分で調べて「親子間売買」をお知りになる方も多いと思います。「親子間売買」を知ること自体は全く問題はありません。

しかし、親子間売買という売買方法は一般の方が簡単にできる売買ではありません。

ご両親の大切な不動産を守るためにご子息が立ち上がり、銀行や信用金庫に融資をお願いしても90%以上の確率で断られると思います。(ご子息の年収等が高くても結果は同じです)

日本の金融機関は「親子間売買」「親族間売買」を認めていません。

ここで大切な注意点ですが、むやみに金融機関・信用金庫に融資を申し込み、一度でも申込みを金融機関に断られますと、断られてしまった履歴が個人情報として6ヶ月間残ります。

この結果、本来、親子間売買を取り扱う金融機関(親子間売買に融資を行う金融機関)にもその履歴の影響で融資を認めていただけないケースが増えています。

親子間売買をご検討されています親族の代表的な方には特に注意して頂きたい点です。

銀行や信用金庫に相談に行かれる前に必ず専門家に相談して頂きたく思います。     

特に競売に入っていて「親子間売買」を希望されるご家族にとって履歴が残る6ヶ月間は致命的な時間になります。 

  

見なし贈与

親子間売買の場合、(親族間含)誰でも思うことに「息子や娘に不動産を売却するのだから、負担がかからないよう、なるべく安く売りたい」こう思うのは当然のことだと思います。しかし税務署にはこの考えは通じません。

親子間で不動産の移転登記が行われる場合には以下3つの形で通常行われます。
1.相続 2.売買 3.贈与


ここで親子間売買で問題になるのが「贈与」です。一般的な「贈与」の場合「土地を無償であげる」「金銭を無償であげる」等、贈与者(渡す方)には「渡す意思」、受贈者(もらう方)には「もらう」という明確な意思が存在します。双方の同意なきものは「贈与」とわ言わず贈与は成立しません。

しかし、「親子間売買」の場合、売買であるが故に当事者に贈与の意識は全くないと思いますが、「みなし贈与」という判断を税務署が執った場合「贈与税の対象」になります。

例えば、相場価格、市場価格において4000万円の不動産をご子息に2000万円で売却したとします。この場合、税務署が市場価格より2000万円安い差額について「みなし贈与」という判断を下す場合があります。つまり2000万円に対して贈与税がかかります。

注意が必要なのは「税務署は数字だけを見ています」つまり親子間売買とは当初は知りません。調査を重ねていくうちに「親子間売買」と知りますが、知れば尚更調査は厳しいものへと変化します。税務署が「みなし贈与」に厳しい理由の1つに「相続税対策」の抜け道に使われることを危惧しています。結論から言えば「親子間売買」であっても相場・市場価格に準じた売買でなければいけません。売買価格は非常に重要です。

みなし贈与と判断された場合、贈与額は高額かつ受贈者が一括現金にて納めることになります。
税務署が「みなし贈与」と判断する基準については税務署員でなければわかりませんが、売買金額が「相続税評価額(路線価)時価の80%に満たない場合」が1つの判断基準だと思われます。

 

また税務署の判断の中に「親族間の親族の範囲」が不明確な部分があります。

 

特例贈与(特例税率)直系尊属(祖父母・父母)から18歳以上の子・孫への贈与

基礎控除後の課税価格      税率    控除額

~200万円以下         10%

200万円超~400万円以下     15%     10万円

400万円超~600万円以下     20%     30万円

600万円超~1000万円以下    30%      90万円

1000万円超~1500万円以下    40%     190万円

1500万円超~3000万円以下    45%     265万円

3000万円超~4500万円以下    50%     415万円

4500万円超~          55%     640万円

 

例)父親が1000万円を20歳の息子に贈与した場合

1000万円 - 110万円 × 30% -90 万円  =267万円
(贈与価格) (基礎控除) (税率) (控除額)   (贈与税額)

 *受贈者の最低年齢が2019年4月より税制改革により
 20歳以上から18歳以上に変更になりました

購入希望者が融資を使う場合

 金融機関が親子間(親族間)売買に融資を行いたく理由は以下の通りです。
1.保証会社が金融機関と保証契約を行わない。
2.売買価格が不透明(初めから疑う?)
3.融資したお金の使途(使い道)が不透明

 

親子間(親族間)売買で購入希望者が融資を受ける場合には、金融機関より重要事項説明書(不動産売買契約書)の提出が求められます。一般的には不動産会社の宅地建物取引士より説明を受ける書類ですので、購入希望者が融資を受ける場合には、不動産会社を介した契約を結ぶことが必須条件になります。また金融機関もそれを望みます。一般的なごく普通の取引を望みます。

逆に融資を必要とせず、現金等で売買が行える方は必ずしも不動産会社を介する必要はありません。売主と買主の同意があれば、不動産契約書や重要事項説明書がなくても売買自体は成立するはずです。しかし、税務署も金融機関も普通の売買契約を願っています。形、形式に拘りがありますので、一般的な不動産会社を介した不動産取引の方が安定感を増すことは言うまでもありません。

3000万円特別控除

譲渡所得という言葉を聞いたことがあると思います。
簡単に言えば、不動産を購入したお金より売却した
お金の方が多かった場合に生じる税金。儲かった場合に
かかる税金になります。

この税金、諸条件を満たせば3000万円の特別控除を
受けれるのですが、親子間売買のように親子の売買・
夫婦間の売買などは適用がありませんので注意が必要です。

しかし、一般的に譲渡所得が生じるケースは稀なことです。
大抵は売却した時点で購入金額を上回ることはありませんので
さほど気にしなくてもよいと思います。
「購入した時より3000万以上自宅が値上がりしている」
こういった方は注意が必要ですが稀なケースです。

昔のことで不動産取得費用が解らない?
こういう方もいると思います。


詳しくは税理士に聞いて欲しいのですが
概算取得費として売買価格に一律5%を控除して計算したり
間接的に証明できる書類を精査し計算して求めたりと
計算方法は何種類かあります。

 

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まとめ

お金の話はさておき、親子間売買の場合に
一番大事なことは「購入後」のご子息の将来になります。

・結婚前のご子息に影響を与えることがないか?

・結婚をした場合、同居が可能なのか?また同居できる
 間取りがあるのか?

・購入物件の築年数によっては将来にわたり大規模修繕・
 建替え等の懸念はないのか?

 

親であれば、頭の痛い問題かもしれません。
いくら考えてもなかなか結論が出ないはずです。


正直言って自宅を売却しても、親子間(親族間)売買を行っても
多少の後悔はどちらもついて回ります。
2つを試すことができないので、、、
御子息の意思を尊重する以外にはありません。

簡単に成功して今でも仲良く暮らしている例と
失敗してしまった例です。

成功した例

当時息子さん30歳、すでに結婚されていて賃貸住宅に住んでいました。
お子さんも1人できて「そろそろマイホームでも」と考えだして
いた時に、自身の親の住宅ローン問題を打明けられて、親子間売買
を決断しました。現在でも仲良く暮らしています。

「何故うまくいっているか?」を第三者の私から見て感じることに
「嫁さんが良い意味で楽天家であり、甘え上手」

嫁姑問題を非常にうまくコントロールしています。
例えば、嫁さんも仕事はしています。この仕事を
していることを盾に、昼飯用の弁当は旦那・嫁の分を
姑さんが作っています。あ、夕飯もすべて姑さんが作って
います。

この甘え方が非常にうまい、かわいい。頭を使っていますし、
実際、嫁も恩恵を授かっています。彼女を見て思うことに
姑さんも、「自分の娘」と思えれば、苦にならないのかな?
と思います。孫の幼稚園の送迎までこなす姑さんでは
ありますが、常にあてにされていて、まんざらでもないようです。

現在、大型リノベーションのため貯金に励んでいます。
年寄をこき使って(笑)

*私感ですが、最近の姑さん自体が「気が若い」ということも
あい重なって、若い世代の方に「同居」の抵抗感が薄れている
ようにも強く思ったりしてます。

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うまくいかなかった例 

当時、娘さん33歳。既婚者でありお子さんも1人。
やはり娘さんの両親の諸事情により、親子間売買を行い
ましたが、現在は一緒に住んでいません。

一緒に住まなくなった理由は1つではありませんが
大きな理由としては2点。

1.当初から、娘さんのご両親が娘または娘のご主人に
  「申し訳ない」みたいな気持ちが強すぎて、あまり
  居心地が良い場所ではなかった。

2.同居されてからすぐに2人目のお子さんを授かりましたが
  今まで、両親が静かな2人だけの生活をされてきたせいか、
  2人の孫との生活(計6人家族)になじめなかった。
  また、間取り的にも、両親がくつろげるスペースがなかった。

  6人での生活は難しかったようにも思います。その後、
  ご両親は県営住宅に引っ越したと聞いています。

 

お子さんが既婚者か?否か?物件住宅が今後にわたり大型修繕や
建替えが必要なのか?否か?、間取り的に同居が可能なのか?否か?
御子息の年収?

 

全てを鑑みて、ことによっては新築を購入されて同居された方が
良い場合もあります。または土地はすでにあるのですから、
とりあえず親子間売買行い、将来的に、大型修繕、建替えを
検討する方が良い場合もあります。
一概には言えず、ケースバイケースだと思います。