一寸先は光なり

不動産全般・住宅ローンに不安のある方へ

住宅ローン・税金の無益な差押え・横浜

国税徴収法第48条「差押えることができる財産の価格がその差押えに係る滞納処分費及び徴収すべき国税に先立つ他の国税地方税その他の債権の金額の合計額を超える見込みがないときは、その財産は差押えることができない」

 

通常の不動産売買・任意売却を行う場合、公債権者(市役所・税務署等)の差押え解除の同意交渉は必ず必要になります。税務署や役所に長期間税金納付を滞納しますと、所有している不動産を差押えされてしまいます。

 

差押えしても先行債権(住宅ローン・金融機関)があるため無剰余(その不動産の時価以上に抵当権が設定され担保価値が無い状態)になることが解っていながら差押えを行うのは 

①時効の停止 

②その不動産の時価が査定する専門家によって査定が変わるためとりあえず差押える。こういった意味あい大きいからです。

 

例えば、実勢価格4,000万円のあなたのマイホームがあったとします。そして、このあなたのマイホームに対して8,000万円の債権を有している銀行が、同土地・建物につき被担保債権8,000万円とする第一抵当権を取得します。(通常は金融機関が第1抵当権者です。)


このあなたのマイホームを競売、任意売却にかけても、4,000万円を大きく超える売買代金になりませんし、第1抵当権者に対する8,000万円の債務を完済することは不可能だと推測できます。


これにより国税徴収法48条に従えば「銀行の抵当権より優先されていない滞納された税金があっても、あなたのマイホームを差押えすることは駄目ですよ、無益な差押えですよ」ということになります。簡単に言えば「配当が見込めない(税金の回収が見込めない)不動産を差押えるな」ということです。

 

しかし、近年、この無益な差押えが頻繁に行われていることは言うまでもありません。自事体によりますが「全額納付」以外は差押え解除には応じないという強気の自事体が大分増えました。


一点、注意点ではありますが、税金に関する支払の話合いを公債権者とする時に「無益な差押えだ」と言うのは得策ではありません。あくまでも「お願い」という気持ちで話合いに望んだ方が結果も良い。

 

 

実際の判例                          

 

{判示事項}

死亡Aの相続財産法人である原告が、存命中に同人の所有財産を差押えた被告に対し、国税徴収法に反して違法に差押え解除をしなかったため、清算業務が妨害された結果、競売手続きを強いられたと主張し、国賠法上の賠償を請求した事案。

 

裁判所は、国税徴収法上の差押え解除義務の判断にあたり、原告の差押え財産を678万円程度と評価し、優先債権が合計1,928万円余であるから、被告(差押えをした役所等)は本件差押えを解除すべき義務があったとし、被告の微税史員の過失及び原告が任意売却の機会を失ったための損害賠償責任を認め、任意売却予定額と競売価格の差額から任意売却を前提として、実施を予定していた擁壁の撤去等の是正工事の見積額等を控除した残額を損害と認定し、請求の一部を任用した事例。

 

 {判例番号}L06950724                               {事件番号}静岡地方裁判所浜松支部判決・平成24年(ワ)第737号             {判決日付}平成26年9月8日
 {掲載誌}判例時報 2246号81項